「なぜ山に登るのか?」という質問に「そこに山があるからだ」と答えたのは登山家のジョージ・マロリーらしいですが、古来より冒険心溢れる人は多く、未知の世界を開拓することに人生を注ぐ人もいます。



開拓の対象の中でも、その存在が謎に包まれている場所は秘境と呼ばれます。

衛星写真の発達によって、人間が足を踏み入れずともその様子を知ることができるようになったこともあり、地球上に秘境と呼ばれるところは徐々に減っています。

インターネットで沢山の情報が共有される中、現代にあっても未だ謎に包まれた場所は「最後の秘境」などと呼ばれたりもしています。

ロボットやドローンを利用することで秘境の調査もどんどん進むようになると思いますが、ここまで明らかになるまでには多くの人間の知恵と人生が注ぎ込まれています。

しかし、技術や文明が発達した現代にあって辿り着くのが難しい場所というのは確実に存在します。



◯人体の秘境に挑む

2年前から学び始めた活法・整動鍼では常に人体を連動という視点から開拓し、人間の体の仕組みを解析することで様々な体の症状の治療に役立っています。


そんな活法・整動鍼の腰痛治療で秘境のようなところがあります。

その場所は大体腰椎と骨盤の境目あたり。


人によって症状を訴える場所は微妙に違いますが、一般的なツボでいうと関元兪あたりを中心に手の平のくらいの範囲のどこかに痛みが残ることが多いのです。

整動鍼基礎編の内容ではどうやってもその部分の症状が抜けません。

活法だとピンポイントに腰の症状を抜く「腹部の透し」という技を使いますが、もちろん施術者の腕によっては症状を取り切れないこともあります。

イメージとしては峡谷のようです。

他のところは普通に進めるのにその部分だけ隙間のように空いていて、先の地形が見えてはいるがそこには中々たどり着けない。

腰痛治療において活法でも整動鍼でも進むにはかなり険しいエリアです。




◯整動鍼による人体の開拓

整動鍼応用編ではついにその秘境に踏み込むことになります。

そのエリアは整動鍼創始者の栗原先生にとっても険しい秘境だったのかもしれません。

テキストを開くと、そのエリアの1点には「雲峡」というツボの名前がつけられていました。


テキストには雲峡に関わる一連の連動の様子が記されていたのですが、それを見てビックリ!

基礎編の内容を使って脊柱の調整をしても、内臓の調整をしてもここだけ必ず残る理由が分かりました。

ざっくり言うとこれまで教わったものとは別ルートで肩から腰、脚へと繋がる連動があり、雲峡はその中に入っています。

腰痛治療でよく使う脊柱や内臓などとは別の連動系になっているのです。

これでは基礎編だけではどうにもならないはずです。




◯秘境攻略のツボ

整動鍼では連動する関係にあるコリをツボと定義していて、症状を出しているツボには必ずそれと連動する原因となるツボがあります。

鍼をするのは原因となるツボ。

原因となるツボが鍼によって緩むと、症状を出しているツボも緩んで動きが整えられ、結果として痛みなどの症状が改善していきます。


雲峡も直接鍼をするわけではなく、雲峡を緩めるためのツボがあります。

そのツボは肩甲骨の内縁にあります。

この肩甲骨の内縁のツボ取りはおそらく言葉だけでは伝わりません。

セミナーでツボの触感を自分の指で感じ、鍼をしてその効果を目の当たりにして欲しいと思います。




正直どうやってこの連動に行き着いたのか全く分かりませんが、とにかく連動思考編を学ぶことで秘境の攻略が可能となりました。

実際に使ってみると確かに雲峡周辺が緩み、その周辺に出ていた痛みも軽減あるいはなくなります。

腰痛や坐骨神経痛の患者さんを治療していて、かなりの確率で「ここがまだ痛いです」と言われるも鍼だけでは対処できなかった雲峡の症状。

その苦戦していた症状が、肩甲骨の内縁のツボに鍼をしただけでウソのように消えていくのです。

また実際に雲峡系を使えるようになって感じたのは、思っていた以上にこの連動系の問題を抱えている人が多いということ。

すごいものを教わったんだな、と使う度に感動を覚えます。




◯技術とは使い分けるもの

雲峡は脊柱や内臓とは別の連動系にあり、膝や足底の症状にも大きな効果を発揮します。

雲峡そのものの痛みは活法の「腹部の透し」でも何とかなる場合もありますが、その技で膝や足底まで作用するかというと、これはもう別の話です。

「腹部の透し」は症状に直接アプローチしますが、雲峡系は連動を整えます。

雲峡系は肩甲骨の内縁にあるので肌を露出する必要があるため、施術所で使うにはいいのですが、屋外などの緊急の場合や、鍼の持ち合わせがない場合は使えません。

一方、「腹部の透し」は時と場所を選ばず、患者が立ったままで施術できます。

私自身、車から降りて歩くのが大変という患者さんに駐車場で腹部の透しをして少し歩けるようになってから治療院内に入ってもらったという経験があります。

緊急時の「速さ」は活法の大きな利点です。


技術に優劣はなく、両方覚えて使い分けることができれば、対応力は何倍にもなります。

連動思考編だけでここまで治療が変わるとは思っていなかったので、残りの2編が楽しみです。