鍼灸師は患者さんの体に触れる仕事です。

鍼灸師に限らず、およそ治療だとか施術と呼ばれるものを生業としている人は他人の体に触れる、ということを避けては通れません。

鍼灸師の手は患者さんの体の状態を読み取る感知器であり、鍼灸師自身のことを患者さんに伝える伝達器であるとも言えます。


その中でも指は特に細かいレベルの機能が求められます。
そのため指の状態に気を使う鍼灸師は多いと思います。

突き指しないように球技はやらない、刃物で傷つけないように料理はしないなんて人もいますし、中には普段は手袋をしていて余計な情報を読み取らないようにしている人もいます。

手袋の件に関してはApple社のジョブズやフェイスブック社のザッカーバーグが決断疲れをしないように日常の決断の回数を減らすためにいつも同じ服を着ていた、というエピソードに通ずるものを感じます(今回はそういう話ではないのでこれ以上は深めません)。

日常生活レベルから指の感覚のケアを意識する人もいる一方、さほど意識せず生活している鍼灸師もいます(むしろこっちの方が多い)。

意識しないことは悪いことというわけでもなく、指で様々な情報に触れるため、自然と感覚的な部分のトレーニングになるという側面もあります。

どちらのタイプの人でも最低限このくらいのことは意識している、というラインがあります。

それは・・・


「爪の長さ」です。



昨今は女性はネイルをする人が多くなりましたが、ネイル以前に爪そのものが美容面でのケアの対象になっていると感じます。
爪のツヤや形も大事ですが、その長さも大事なポイントかと思います。
男性の場合はネイルする人はほとんど見かけませんが、身だしなみとして切りそろえておくことが当然となっています。

鍼灸師はというとツボをとる際にどうしても指は使いますし、ツボにも体の表面に近いツボ、深いところにあるツボなど色々あるので、ただ触れるだけの時もあれば、指を深く沈めることもあります。

そんな時に爪が伸びていたら患者さんとしては爪の固い感触を感じたり、爪が食い込んで痛いことも多くあります。
そのため、鍼灸師は患者さんに不快な思いを与えないように、日頃から爪のチェックを怠らず、常にやや深爪気味の人が多いのです。

そうなってくると爪を切る道具にもこだわりが出てきます。

私がここ数年足を運んでいる活法研究会会員の多くが買い求めて愛用している爪切りがあります。




それがSUWADAの爪切りです。


「爪切りなんてどれも同じでしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、ところがどっこい使ってみると大違いです。



爪切りも刃物の一種。

刀に名刀となまくらがあるように爪切りにも切れ味の違いは確実にあります。


SUWADAの爪切りはニッパータイプ。

普通のニッパー持ちでも使えますが、持ち方を変えると普通の爪切りのように使えます。


切れ味は音に現れます。

普通の爪切りでは「パチン」という音がします。

SUWADAの爪切りは「カツッ」という感じの小さな音がします。

参考に以前「鍼灸師のツボ日記」でアップされた動画をどうぞ。

こちらから。

動画はリンク先の中央あたりにあります。


切るときに指に伝わる感触はもっと明確に違います。

普通の爪切りだと表裏から爪の表面を挟んで力を加え、そこからいきなり爪を切断して刃同士がぶつかり合うような感触が伝わってきます。

SUWADAの爪切りは最初に爪にスーッと刺さっていくような感触があり、最後の固い芯を瞬間的に裁断している感触があります。

鉈(なた)と包丁の違いと言えばいいか、ハサミのカミソリの違いと言えばいいか、とにかくSUWADAの爪切りには鋭利な刃物が爪に入り込むような感触があり、爪の固さによる抵抗が少ないのです。

まさしく名刀という感じの逸品です。



某漫画で「戻し切り」という、切断面がピッタリ合って元に戻せる切り方のできる業物が登場していましたが、SUWADAの爪切りを使ったとき何となくその「戻し切り」を連想しました。



爪を切った後、ヤスリがいらないくらい滑らかなので戻し切りできそうな気がしたのです(実際はできません)。



また、その刃の鋭利さと造りの精密さはその姿にも見てとることができます。

刃を合わせたときその隙間がほとんど見えません。まるで連続した曲面のようです。




爪切りとしてはかなり高価な部類ですが、日々指先に気を使う鍼灸師としては、持っておいて損はないと思います。



爪切りの機能もさることながら、人の手による精巧な技術に日常的に触れることは、精密なツボ取りを求められる鍼灸師にとってはそれだけで価値あることです。