日常生活に生かす活法の所作

活法には「置き直し」という所作があります。

施術前に患者さんの腕や足の位置を変えたり、乱れた服の裾を整えたりするというちょっとしたことなのですが、これだけで患者さんの関節の可動域が増したり、筋力が強くなったりします。

もちろん治療ではないので劇的な変化ではなく微量な変化ではありますが、施術を始める前にすでに体は良くなり始めているので、ただ施術するよりも有利です。

体が整うと自然に心も安心してきます。
置き直しの一手を加えることで術者も患者さんも安心して施術に臨めるというわけです。




この置き直しは治療だけのものかというとそうではありません。

実際に試してみましょう。


①まず上体を前屈して床にどのくらい手がつくか、腕を前からまっすぐ上げてどこまで動かせるかを調べておきます。

②次に部屋の中にあるものを置き直します。
テーブルやティッシュの箱、時計、置きっ放しのペンや雑誌など何でもいいです。
綺麗に整頓するように置き直してください。

③再び①で確認した動きを調べます。



どうでしょうか?おそらく置き直した後の方が動きが楽になり、床に手がより近づくとか、肩がより動くとかの変化が出ていると思います。
(変化はあまり大きくないので人によってはあまり変化を感じないかもしれません)

変化を感じにくい場合はもっと沢山のものを置き直してみると分かるかもしれません。



この置き直しは我々が日常生活の中で当たり前のように行っています。

朝仕事を始める前にデスク周りを片付ける、掃除する、靴を脱いだら揃える、出入りした戸を最後まで閉める、など、全て置き直しの要素が入っています。

置き直しによって活動しやすい環境を作るわけです。





個人的な感覚としては「その時の自分にとっていい位置に自分の体が自然に対象を置き直している」ように感じます。

だから置き直しは「自分で行うこと」で自分が活動しやすい空間を作れます。

自分のいないときに自分の部屋を他の誰かに片付けたり掃除されると、きちんと片付いているのに、ちょっと動かして調整したくなることってあると思います。

そうやって自分の手で置き直すことで自分の空間になるんですね。





わずかな変化なので重要視しない、という人もいると思います。

他人に強要することでもありません。

でも小さな変化の積み重ねの実践はいざという時の自信や落ち着きを生んでくれます。

それに、ちょっとした変化でも体が動きやすい状態にあるというのは気分がいいものです。


ぜひ日常生活で「置き直し」を楽しんでみてください。

臨床では見えない鍼灸師の体の使い方〜整動鍼触診刺鍼実践編セミナーレポート〜

◯鍼灸師にとって重要なもの

鍼灸師が治療を行う上で重要なのは手の指です。

5cceec5da80e1dfb5b9a9f03e9a259e2_s


治療に必要なツボ取りをするにも、鍼を刺すにも指の扱い方と指先の感覚はとても重要です。

指は患者の体の状態を読み取るセンサーであり、ツボ取りの探知機であり、患者に施術者の情報を伝える発信器でもあります。
そのため鍼灸師はそのケアにも気を遣います。日々爪の長さに気を配り、切る道具にこだわりを持つ人もいます。

人によってはボールを直接手で扱う球技は一切やらないとか、指を守るために家事は家族に任せて一切せず、指を大切に扱っているなどという話も聞くことがあります。


大事だという割に指や手の使い方、患者さんへの触れ方などを教わる機会というのはそれほど多くありません。

この辺りのスキルはセミナー的に「体の使い方」というカテゴリーに入るのですが、巷に溢れる治療家のためのセミナーのDMなどを見ると「一瞬で○○の症状が治る奇跡の治療法!」というような理論や技術に関わるものばかりです。





◯「鍼治療以前」を学ぶセミナー

今回はそんな体の使い方を学ぶセミナーに参加してきました。
そのセミナーは6/4に開催された「整動鍼セミナー触診刺鍼実践編」

IMG_2153


整動鍼セミナーは開催当初から体の使い方を重要視していて2日日程の1日目のセミナー後に「触診塾」と題して体の使い方を学ぶ任意参加のセミナーの時間を設けていました。

しかし帰宅しなければならず参加できない人、もっとしっかり時間をとって教わりたい人達の要望を受け、今年から1つのセミナーとして設置されました。


内容としては触診塾でやっていた体の使い方に加え、それを実践する題材として体験会の内容のツボ取り、刺鍼をすることになっています。

体験会の内容は、使用頻度が高いにも関わらず時間の都合上デモのみとなっているため、ツボ取りの練習をする機会がありませんでした。

体験会の内容を深く学べるというだけでもかなりオイシイセミナーです。




◯手の使い方は◯◯が重要

セミナーでは自分では中々気づくことのできない内容が惜しげもなく説明され、指導されます。

患者さんへの声のかけ方、近づき方、触れ方など、1つとして疎かにしていいものではありません。

患者さんへの触れ方では距離感、指の使い方、患者さんの状態の捉え方、評価の仕方などが説明されます。

患者さんに手で触れるので皆手や指の使い方ばかりを気にしてしまうのですが、手の使い方をよくするには、姿勢や目線、距離感など、手以外の体の使い方が重要です。


姿勢が悪いと触り方が雑になります。


目線や距離感が不適切だと患者さんに不快感や圧迫感を与えます。



誰もが聞けば「そうそう!」と納得するものの、いざ実践となると知らないうちに悪い例をやってしまうもの。

体の使い方の訓練は、自身の無意識の動きの訓練でもあります。




◯鍼のための訓練は鍼の実践でのみ学ぶものか?

整動鍼のセミナーで体の使い方の話を聞いていると活法を思い出します。

注意するべきポイントが全く同じだからです。

坐骨上げ

画像は活法研究会のHPより



整動鍼は活法から生まれたと言っても過言ではない技術なので当然といえば当然のことなのですが、最近は整動鍼のみを学ぶ人も増えてきたので知らない人もいるかもしれません。


整動鍼は鍼という道具を介して治療をしています。

またツボの定義がシンプルで鍼をしての効果がハッキリしていて、再現性が高いのも特徴です。


しかし、ここに1つの問題があります。









鍼という道具、整動鍼の理論が優秀すぎるが故に、体の使い方がまずくてもそこそこの成果が出せてしまうのです。



もちろん体の使い方が加わればよりツボ取りの精度が上がるため治療効果もより高まります。


一方、活法はというと体の使い方が技の成否を決定します。形だけを真似しても体の使い方という中身が伴わないと治療になりません。

いやでも体の使い方は上手くなっていきます。

活法は間違いなく整動鍼を扱う能力を底上げしてくれます。

「整動鍼を学ぶ者は活法もまた学ぶべし」と強く思います。



今回のセミナーは整動鍼を扱う上での活法の重要性を再認識することになりました。

整動鍼と活法の両方を学ばなければ見えない世界があります。
その可能性は未だに広がり続けています。

鍼灸界の革新はまだ始まったばかりです。

過剰なる接待〜整動鍼北海道セミナーレポート番外編〜

前回はこちら

北海道で初開催の整動鍼セミナーは大成功のうちに終わりました。

今回の成功の裏には毎回セミナーの準備をしている講師陣の努力ももちろんあるのですが、現地ホストである快気堂鍼灸院白石の谷地一博先生の尽力が大きかったと思います。

会場の手配に始まり、参加者への会場案内、当日の準備、片付けなど色々大変であったろうと思うのですが、それに加えて谷地先生宅に泊めて頂いた私と講師の先生方は色々と接待して頂きました。

今回はその一端をご紹介したいと思います。



◯食事で接待

北海道と言えば食の宝庫です。農業、畜産、漁業も盛んで、名産品も盛り沢山。

元々栗原先生に北海道の味覚を堪能してもらいたいという思いが谷地家にあったらしく、私もその恩恵に預かることができました。


前入りした日の夜の新千歳空港の回転寿司に始まり、


セミナー2日目の夜は同じく空港で札幌ラーメン。




朝食は谷地先生の奥さんのマナコさん手作りのちゃんちゃん焼きや石狩鍋、八紘学園の生クリームのような味わいの牛乳やとれたて卵の卵かけご飯、道内産のサツマイモのような甘さのジャガイモ「インカのめざめ」にバターとイカの塩辛を乗せて頂く、家庭菜園の採れたてアスパラやホッケ、タラコなどの海の幸・・・とても朝食とは思えないような豪華なラインナップが2日間に渡って繰り広げられられました。

写真を撮っていなかったことが悔やまれます。


整動鍼セミナーでは実技時間の確保の為に昼休みが40分程度と短いことが多く、飲食店でゆっくり食べることができないことがほとんどですが、今回に関しては栗原先生をはじめ講師の秋澤先生や坂口先生も朝食の満足度の高さゆえ、昼は少食になっていたため、時間が短くても何の問題もありませんでした。

このブログを書いていても味を思い出しよだれが出てきそうです。
そのくらいの美味しい食べものの連続でした。



◯息子さんの接待

谷地先生には4歳になる息子さんがいます。度々ブログにも登場していて活法研究会の中ではちょっとした有名人です。
私は昨年の活法合宿でその息子さんに会っているのですが、温泉でちょっと怖がらせてしまっていたので、今回はどうなるかちょっと心配でした。




しかしその心配は杞憂でした。




谷地先生が息子さんに「栗原先生が来るんだよ〜」と言うのと一緒に「小松田さんも来るんだよ〜」と夜な夜な言い続けていたおかげなのか、私が谷地家を訪問するのをものすごく楽しみにしてくれていたようなのです。


前入りした日、谷地家にたどり着いて一休みしていると谷地先生の奥さんのマナコさんと息子さんがやってきます。

マナコさん曰く「息子が小松田さんとUNOをやりたいと言ってるんです」


「え?あ、はい、いいですよ」

息子さんとマナコさんと私の3人でUNOを始めます。(この時谷地先生は患者さんの治療中)

初戦はわざと負けてあげ、2戦目は大人の強さを見せてあげようと思っていたのですが、そういう下心があると物事は上手くいかないもの。5戦ほどしてまさかの全敗・・・。



勝ちに気を良くしたのか息子さんは次のゲームを持ってきます。


なんと「修造かるた」!


「修造かるた」はあの熱い男、松岡修造さんの名言をかるたにしたもので、修造さんの全力のポーズとともに様々な名言が綴られています。
では一緒にかるたを、と思っていたら、息子さんは札を読むのにハマっているとのこと。
しかも字を全部読めるわけではないので読み札の頭文字を一声叫び、あとは修造ポーズの真似をして、その情報を元に私とマナコさんがかるたをするという何ともシュールなかるた遊びが始まりました。


これってかるた遊びとして成立するのか?と思っていたら、息子さんの修造ポーズ真似が意外と高クオリティだったため、案外普通にかるたができてしまいました。気づいたら全ての札を取り終えていました。

何とも普通とは違う方向性への成長が楽しみです。



◯セミナー翌日

栗原先生をはじめ講師陣はセミナー終了の日に飛行機で東京方面に帰りました。
私は帰る飛行機が無いのでもう一泊。

翌日の午前は時間が空いていたので観光でもしようかとぼんやり考えていたのですが、ある言葉をきっかけに予定は変わりました。


谷地息子の「UNOやろう」宣言です。
今回は一切手加減なしです。40歳が4歳をカードゲームで全力で倒しに行く姿はかなり大人気ないとは思いましたが、私が放った「男の勝負だ!」という言葉が息子さんの男心をくすぐったらしく何度負けても立ち向かってきます。

そんなこんなでUNO、トランプでの神経衰弱、「キリンとぞう」という駒遊びなどで次々と勝負を続け、気づいたらあっという間にお昼に・・・。




◯いざ発祥の地へ

ここで谷地先生からお昼の提案が。

「せっかくだから皆でスープカレー発祥のお店に食べに行きましょう」

前日には時間がなくて栗原先生達が食べられなかった本場のスープカレーと対面できることになりました。

件のお店の名前は「マジックスパイス」


お店の名前にインパクトがありますが、店内の様子にはもっとインパクトがあるお店でした。

インド風の装飾だらけの店内


壁に並ぶ文字は辛さの段階。



そのスープカレーはというと「辛いのに喉が乾かない」不思議なカレーです。


鶏モモ肉が丸ごと一本入っているし、辛さも旨味もしっかりしてそれほど飽きのこない味です。
それでいて辛いものを食べた後の水が欲しくなる感じがないのです。まさしくマジック!

ただスープカレーの発祥はここでも、その後色々とスープカレーも変化しているらしいので他のお店もいずれ行ってみないといけません。まだまだスープカレーも楽しめそうです。



この後、最寄りの白石駅まで送っていただき、谷地先生一家に別れを告げました。

谷地先生一家にはとても感謝しています。
谷地先生一家のこれでもかというほどの接待があったからこそ今回の北海道セミナーは普段のセミナー以上の楽しい思い出になりました。

他人と3泊4日で寝食を共にするなどということは、それこそ修学旅行や部活動の合宿くらいしかチャンスがありません。

別れの歳に息子さんに手を振った時には何だか親戚のおじさんのような気持ちになっていました。






今回北海道のセミナーに参加したことで、また北海道に行く理由が増えたと思います。
今年の整動鍼札幌セミナーはあと2回、7月と9月にあります。

私は参加はしませんがこの調子だと来年も開催されそうな気がします。








おまけ

ちなみに翌週、後輩の結婚式のために再び札幌を訪れたのですが、その時にも時間を作って空港まで来てくれて一緒にお昼ご飯を食べました。もう本当の親戚より会ってます(笑)



さらにその翌週も東京のセミナーで谷地先生と一緒だったのですが、その話はまた次の機会に。


整動鍼北海道セミナーレポート 〜完〜
ギャラリー
  • 私が活法セミナーに通い詰める2つの理由〜活法基礎セミナー下肢編レポート〜
  • 歴史を紡ぐ夏
  • 歴史を紡ぐ夏
  • 歴史を紡ぐ夏
  • 歴史を紡ぐ夏
  • 宮部みゆき著「荒神」を読んでこんなものを思い出した
  • 秘境に挑む鍼
  • 秘境に挑む鍼
  • 爪で感じる「技」