宮部みゆき著「荒神」を読んでこんなものを思い出した

遅ればせながら先日、宮部みゆき著「荒神」を読みました。

宮部 みゆき
2017-06-28




小説は読み始めると他のことを全て放っておくダメ人間になるくらいに没頭しやすいので、最近あまり読まなかったのですが、今回なぜわざわざこの小説を読んだかというと、単純に作品の中に碓井流活法が登場するからです。

活法研究会内のブロガー鍼灸師達も「荒神」についてをブログの中で書いています。





「荒神」は朝日新聞の朝刊で2013〜2014年に連載、単行本が刊行されたのは2014年ですので、上記のブログ記事は数年前のものです。

私は今回文庫版が発売されたので、新聞掲載時の挿絵を本にした、こうの史代著「荒神絵巻」と一緒に購入。


こうの史代
2014-08-20




この2冊、今まであまり本屋で見かけなかったのですが、2018年1月にBSでのテレビドラマ化が決まったらしく、その番宣のために本屋に山積みになっていました。

おそるべしドラマ効果・・・。



話の中核を担う「怪物」をどう映像化するのか、絡み合ったプロットをどう解きほぐしてオリジナル要素を出していくのか、それともそのまま映像化するのか、配役は誰になるのか・・・色々興味は尽きませんが半年後を楽しみにしたいと思います。



さて「荒神」についてあれこれ語りたいところではありますが、書き出すと完全にネタバレブログになってしまうので、今回は「荒神」を読んで私が連想した小説や映像作品を紹介したいと思います。






「ジェヴォーダンの獣」




いきなりマニアックな感じのものからいきます。

18世紀のフランスジェヴォーダン地方で実際に起こった謎の怪物による殺戮事件を基にしたフィクション映画です。

映画は謎の怪物による犠牲者が増える中、一人の博物学者が王命で派遣され、その正体に迫っていく、というもの。

正体不明の獣の存在や、そこにまつわる様々な人間の思惑や人間関係は「荒神」の大きな流れと似ている気がしました。

ミステリー要素も含みつつ、アクション要素も存分にあり、主人公の博物学者とその相棒が、獣やそれ以外の敵と戦うシーンはかなりカッコイイです。

ちなみにこの主人公、なんとなく荒神の登場人物、榊田宗栄を思わせます。

活法は使いませんけどね。





「ゴジラ」シリーズ

怪獣というと日本人が真っ先に思い浮かべるのはやはりゴジラだと思います。

中でも「荒神」と似た感じを受けるのは第1作目の「ゴジラ」と「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」です。

宝田 明
2014-04-23






第1作目の「ゴジラ」では、海に住む伝説の怪物「呉爾羅(ゴジラ)」の伝承があり、当初はその体の一部と襲われた村の様子が描かれます。

「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」ではゴジラに対抗するため、日本各地に封じられた護国聖獣モスラ、ギドラ、バラゴンを目覚めさせます。

ゴジラは常に「戦争」や「核兵器」などのテーマを踏まえていますが、そうしたテーマや昔の伝承が現実のものとなるというあたりに「荒神」と似たものを感じました。

それにしてもタイトルに名前を出してもらえない上、登場してからあっという間にゴジラに倒されるバラゴンが可哀想・・・(笑)





「帝都物語」

そしてこれです。




巨大な怪獣は一切出てきませんが、式神や鬼の類、陰陽道、風水、奇門遁甲など、サブカル魂を揺さぶられる要素がてんこ盛りの作品です。

私は映画の方を先に観ましたが、嶋田久作さんの加藤保憲役がハマり過ぎていて、内容よりも加藤保憲の存在感に目がいってしまいました。



平将門の怨霊により帝都東京の破壊を目論む魔人加藤保憲とそれに立ち向かう人々との攻防を描くこの作品は、陰陽道や風水の要素の色濃い影響と、様々な登場人物の思いや人間関係が入り乱れ、独特の世界観を構築しています。

映画版の、土御門家の平井保昌(平幹二朗)の元を渋沢栄一(勝新太郎)が訪れるところから始まる冒頭のシーンは、圧巻であるとともに帝都物語の世界観を凝縮していて結構好きです。




これらの作品を紹介しただけで既に「荒神」のネタバレをしてしまっている気がしなくもないですが、「荒神」を読んでその設定や世界観が好きだと感じる人なら楽しめる映画ではないかと思います。

「荒神」自体は読み応えがあってかなり面白いですし、一気に読み進めてしまうくらいに引き込まれる作品ですので、気になった方は是非!

秘境に挑む鍼

「なぜ山に登るのか?」という質問に「そこに山があるからだ」と答えたのは登山家のジョージ・マロリーらしいですが、古来より冒険心溢れる人は多く、未知の世界を開拓することに人生を注ぐ人もいます。



開拓の対象の中でも、その存在が謎に包まれている場所は秘境と呼ばれます。

衛星写真の発達によって、人間が足を踏み入れずともその様子を知ることができるようになったこともあり、地球上に秘境と呼ばれるところは徐々に減っています。

インターネットで沢山の情報が共有される中、現代にあっても未だ謎に包まれた場所は「最後の秘境」などと呼ばれたりもしています。

ロボットやドローンを利用することで秘境の調査もどんどん進むようになると思いますが、ここまで明らかになるまでには多くの人間の知恵と人生が注ぎ込まれています。

しかし、技術や文明が発達した現代にあって辿り着くのが難しい場所というのは確実に存在します。



◯人体の秘境に挑む

2年前から学び始めた活法・整動鍼では常に人体を連動という視点から開拓し、人間の体の仕組みを解析することで様々な体の症状の治療に役立っています。


そんな活法・整動鍼の腰痛治療で秘境のようなところがあります。

その場所は大体腰椎と骨盤の境目あたり。


人によって症状を訴える場所は微妙に違いますが、一般的なツボでいうと関元兪あたりを中心に手の平のくらいの範囲のどこかに痛みが残ることが多いのです。

整動鍼基礎編の内容ではどうやってもその部分の症状が抜けません。

活法だとピンポイントに腰の症状を抜く「腹部の透し」という技を使いますが、もちろん施術者の腕によっては症状を取り切れないこともあります。

イメージとしては峡谷のようです。

他のところは普通に進めるのにその部分だけ隙間のように空いていて、先の地形が見えてはいるがそこには中々たどり着けない。

腰痛治療において活法でも整動鍼でも進むにはかなり険しいエリアです。




◯整動鍼による人体の開拓

整動鍼応用編ではついにその秘境に踏み込むことになります。

そのエリアは整動鍼創始者の栗原先生にとっても険しい秘境だったのかもしれません。

テキストを開くと、そのエリアの1点には「雲峡」というツボの名前がつけられていました。


テキストには雲峡に関わる一連の連動の様子が記されていたのですが、それを見てビックリ!

基礎編の内容を使って脊柱の調整をしても、内臓の調整をしてもここだけ必ず残る理由が分かりました。

ざっくり言うとこれまで教わったものとは別ルートで肩から腰、脚へと繋がる連動があり、雲峡はその中に入っています。

腰痛治療でよく使う脊柱や内臓などとは別の連動系になっているのです。

これでは基礎編だけではどうにもならないはずです。




◯秘境攻略のツボ

整動鍼では連動する関係にあるコリをツボと定義していて、症状を出しているツボには必ずそれと連動する原因となるツボがあります。

鍼をするのは原因となるツボ。

原因となるツボが鍼によって緩むと、症状を出しているツボも緩んで動きが整えられ、結果として痛みなどの症状が改善していきます。


雲峡も直接鍼をするわけではなく、雲峡を緩めるためのツボがあります。

そのツボは肩甲骨の内縁にあります。

この肩甲骨の内縁のツボ取りはおそらく言葉だけでは伝わりません。

セミナーでツボの触感を自分の指で感じ、鍼をしてその効果を目の当たりにして欲しいと思います。




正直どうやってこの連動に行き着いたのか全く分かりませんが、とにかく連動思考編を学ぶことで秘境の攻略が可能となりました。

実際に使ってみると確かに雲峡周辺が緩み、その周辺に出ていた痛みも軽減あるいはなくなります。

腰痛や坐骨神経痛の患者さんを治療していて、かなりの確率で「ここがまだ痛いです」と言われるも鍼だけでは対処できなかった雲峡の症状。

その苦戦していた症状が、肩甲骨の内縁のツボに鍼をしただけでウソのように消えていくのです。

また実際に雲峡系を使えるようになって感じたのは、思っていた以上にこの連動系の問題を抱えている人が多いということ。

すごいものを教わったんだな、と使う度に感動を覚えます。




◯技術とは使い分けるもの

雲峡は脊柱や内臓とは別の連動系にあり、膝や足底の症状にも大きな効果を発揮します。

雲峡そのものの痛みは活法の「腹部の透し」でも何とかなる場合もありますが、その技で膝や足底まで作用するかというと、これはもう別の話です。

「腹部の透し」は症状に直接アプローチしますが、雲峡系は連動を整えます。

雲峡系は肩甲骨の内縁にあるので肌を露出する必要があるため、施術所で使うにはいいのですが、屋外などの緊急の場合や、鍼の持ち合わせがない場合は使えません。

一方、「腹部の透し」は時と場所を選ばず、患者が立ったままで施術できます。

私自身、車から降りて歩くのが大変という患者さんに駐車場で腹部の透しをして少し歩けるようになってから治療院内に入ってもらったという経験があります。

緊急時の「速さ」は活法の大きな利点です。


技術に優劣はなく、両方覚えて使い分けることができれば、対応力は何倍にもなります。

連動思考編だけでここまで治療が変わるとは思っていなかったので、残りの2編が楽しみです。

爪で感じる「技」

鍼灸師は患者さんの体に触れる仕事です。

鍼灸師に限らず、およそ治療だとか施術と呼ばれるものを生業としている人は他人の体に触れる、ということを避けては通れません。

鍼灸師の手は患者さんの体の状態を読み取る感知器であり、鍼灸師自身のことを患者さんに伝える伝達器であるとも言えます。


その中でも指は特に細かいレベルの機能が求められます。
そのため指の状態に気を使う鍼灸師は多いと思います。

突き指しないように球技はやらない、刃物で傷つけないように料理はしないなんて人もいますし、中には普段は手袋をしていて余計な情報を読み取らないようにしている人もいます。

手袋の件に関してはApple社のジョブズやフェイスブック社のザッカーバーグが決断疲れをしないように日常の決断の回数を減らすためにいつも同じ服を着ていた、というエピソードに通ずるものを感じます(今回はそういう話ではないのでこれ以上は深めません)。

日常生活レベルから指の感覚のケアを意識する人もいる一方、さほど意識せず生活している鍼灸師もいます(むしろこっちの方が多い)。

意識しないことは悪いことというわけでもなく、指で様々な情報に触れるため、自然と感覚的な部分のトレーニングになるという側面もあります。

どちらのタイプの人でも最低限このくらいのことは意識している、というラインがあります。

それは・・・


「爪の長さ」です。



昨今は女性はネイルをする人が多くなりましたが、ネイル以前に爪そのものが美容面でのケアの対象になっていると感じます。
爪のツヤや形も大事ですが、その長さも大事なポイントかと思います。
男性の場合はネイルする人はほとんど見かけませんが、身だしなみとして切りそろえておくことが当然となっています。

鍼灸師はというとツボをとる際にどうしても指は使いますし、ツボにも体の表面に近いツボ、深いところにあるツボなど色々あるので、ただ触れるだけの時もあれば、指を深く沈めることもあります。

そんな時に爪が伸びていたら患者さんとしては爪の固い感触を感じたり、爪が食い込んで痛いことも多くあります。
そのため、鍼灸師は患者さんに不快な思いを与えないように、日頃から爪のチェックを怠らず、常にやや深爪気味の人が多いのです。

そうなってくると爪を切る道具にもこだわりが出てきます。

私がここ数年足を運んでいる活法研究会会員の多くが買い求めて愛用している爪切りがあります。




それがSUWADAの爪切りです。


「爪切りなんてどれも同じでしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、ところがどっこい使ってみると大違いです。



爪切りも刃物の一種。

刀に名刀となまくらがあるように爪切りにも切れ味の違いは確実にあります。


SUWADAの爪切りはニッパータイプ。

普通のニッパー持ちでも使えますが、持ち方を変えると普通の爪切りのように使えます。


切れ味は音に現れます。

普通の爪切りでは「パチン」という音がします。

SUWADAの爪切りは「カツッ」という感じの小さな音がします。

参考に以前「鍼灸師のツボ日記」でアップされた動画をどうぞ。

こちらから。

動画はリンク先の中央あたりにあります。


切るときに指に伝わる感触はもっと明確に違います。

普通の爪切りだと表裏から爪の表面を挟んで力を加え、そこからいきなり爪を切断して刃同士がぶつかり合うような感触が伝わってきます。

SUWADAの爪切りは最初に爪にスーッと刺さっていくような感触があり、最後の固い芯を瞬間的に裁断している感触があります。

鉈(なた)と包丁の違いと言えばいいか、ハサミのカミソリの違いと言えばいいか、とにかくSUWADAの爪切りには鋭利な刃物が爪に入り込むような感触があり、爪の固さによる抵抗が少ないのです。

まさしく名刀という感じの逸品です。



某漫画で「戻し切り」という、切断面がピッタリ合って元に戻せる切り方のできる業物が登場していましたが、SUWADAの爪切りを使ったとき何となくその「戻し切り」を連想しました。



爪を切った後、ヤスリがいらないくらい滑らかなので戻し切りできそうな気がしたのです(実際はできません)。



また、その刃の鋭利さと造りの精密さはその姿にも見てとることができます。

刃を合わせたときその隙間がほとんど見えません。まるで連続した曲面のようです。




爪切りとしてはかなり高価な部類ですが、日々指先に気を使う鍼灸師としては、持っておいて損はないと思います。



爪切りの機能もさることながら、人の手による精巧な技術に日常的に触れることは、精密なツボ取りを求められる鍼灸師にとってはそれだけで価値あることです。

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